INTERVIEW

マッチング事例 インタビュー

Vol.6

大手航空会社出身の経営人材が
M&A後の地方企業で半期利益約6倍を実現

背景・課題

M&A後の看板制作会社に常駐し、経営の舵取りができる人材(代表取締役候補)の採用が急務。職人気質の社員をまとめ、親会社の代表にも意見できる経営のプロフェッショナルを希望。

成果

大手航空会社で人事・労務や経営企画に携わり、事業モデル再構築やマーケティング戦略立案を担当、複数の関連会社で社長、取締役を歴任した経営人材を採用。執行役員を経て、現在は代表取締役として活躍。

経営人材を採用した地域企業

ラッキー工芸株式会社 アイコン画像

ラッキー工芸株式会社

代表取締役社長
藪口 真太郎 様

(元アートプランニング代表取締役)

M&A後の課題に光を
もたらした“経営人材”

アートプランニングの母体であるラッキー工芸は、全国展開する大手リテールブランドのサイン制作を中心に、店舗企画・設計・コーディネートなどを手掛け、企画提案から制作・施工・メンテナンスまで一貫したサービスを展開するソリューションカンパニーです。 私がラッキー工芸の代表取締役に就任したのは2020年。以降、コロナ禍やウクライナ侵攻など世界規模の危機が相次ぎ、原材料費や光熱費が高騰する激動期に突入しました。そこで、兵庫県姫路の工場と東日本を結ぶ新たな拠点を構えて輸送コストを抑え、工場を2拠点化することでリスク分散を図る戦略の一環として、2022年にアートプランニングをM&Aによりグループ化。私自身が代表取締役に就任しました。

しかし、姫路とアートプランニングの拠点である長野県松本を行き来しながらの舵取りには課題が山積みでした。最初に着手したのは、属人化していた経理部門の改革。経理の専門家を求めて八十二銀行様にご相談したところ、経営全般を任せられる人材として野間さんをご紹介いただきました。

代表取締役社長 画像

代表取締役社長
藪口 真太郎 様

地域金融機関の支援で
“奇跡の出会い”が実現

スカウト会社経由で募集をかけてはいたものの、真にフィットする経営人材に出会えずにいた中でご紹介いただいた野間さんは、大手航空会社で重責を務めたまたとない逸材でした。私が経営を学んだ「盛和塾」の主宰者で京セラの創業者・稲盛和夫氏と共に経営再建に取り組まれた経歴もお持ちで、「ぜひ会わせてほしい」とお願いしました。

最初の面談は1時間程度。その短い時間の中でも野間さんの経営者としての高い資質と人間性を感じ取ることができました。当時は、野間さんが当社に興味を持ってくださるとは思ってもいませんでしたが、その後、さらに2度の面談を重ねる中で、我々の経営理念に共感した野間さんは、アートプランニングへの入社を決意してくださいました。

この奇跡的かつ運命的な出会いに恵まれたのは、アートプランニングの経営課題を的確に把握し、私たちの想像を超える優れた経営人材を見つけ出してくださった八十二銀行様ならびに八十二スタッフサービス様のお力添えによるものだと、心より感謝しております。

“本物の経営者”の手腕に敬服

最初は執行役員として入社いただいた野間さんですが、現在は私に代わりアートプランニングの代表取締役をお任せしています。現場を十分に理解していない経営者が、職人気質の社員たちに受け入れてもらうのは容易なことではありませんが、野間さんは一人ひとりと誠実に対話を重ね、確かな信頼関係を構築。社内ガバナンスの強化と人材定着に向けて、さっそく力を発揮してくださっています。

業績面においても、野間さんが入社されて以降、半期利益が従来比の約6倍へと大きく伸長しました。プロジェクトごとの収益を営業部門と製造部門で適切に管理し、徹底的に無駄を排除。業務フローや職務分掌を精緻に整備し、役割と責任の明確化を推進してくださったおかげで、組織としての機能も格段に高まりました。

最近では、2025年12月竣工予定の工場移転という大型プロジェクトの指揮も執っていただいています。やりがいのある仕事を創出し、それを支える制度や働きやすい職場環境を整備することで、売上向上のみならず「働き手から選ばれる会社」へと成長したい――。その実現に向け、今後も野間さんの知見を大いにお借りしたいと考えています。

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社会に貢献できる企業へ
成長し、厚情に報いる

中小企業にとって事業承継は重要な経営課題であり、その観点からも、野間さんのような大企業経験者による客観的かつ戦略的な視点の価値をあらためて痛感しています。 また、中小企業が会社を持続的に成長させるためには、大企業で培われた知見やノウハウを学び、自社に応用していくことが不可欠です。しかしながら、大企業経験者を採用したとしても、そのスキルや肩書きが中小企業にそのまま適合するとは限りません。こうした不確実性を伴う採用において、地域事情を深く理解する金融機関が仲介するREVICareerは極めて有効であり、給付金制度も戦略的人材登用を支援する重要な仕組みだと感じています。今後、さらなる経営人材を求める際にも、REVICareerの活用を積極的に検討したいです。

目下の目標は、アートプランニングの成長のために尽力いただいている野間さんのご厚情にしっかりと報いること。“真の経営者”である野間さんの知識と経験をかけがえのない財産として受け継ぎ、社会により一層貢献できる企業へと成長すべく、挑戦を続けてまいります。

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マッチングした経営人材

株式会社アートプランニング アイコン画像

株式会社アートプランニング

代表取締役社長
野間 和昭 様

第二の人生は
自然豊かな地方で!

60歳で定年を迎えるまで、大手航空会社に勤務しておりました。人事・労務や経営企画に携わり、事業モデルの再構築や事業マーケティング戦略立案を担当。また、複数の関連会社の社長、取締役を歴任し経営のかじ取りをしてきました。定年後は再雇用の道を選ぶこともできましたが、「社会的責任を果たし終えたら、地方の活性化に役立ちたい」という夢があり、強い意志を持って退職しました。

地方での暮らしを望んだ背景には、本社で事業企画部長を務めていた時代、国が掲げる「訪日外国人旅行者数2,000万人」という目標を達成すべく、海外からのお客様を日本の地方へお連れするミッションに力を注いでいた経験があります。この事業を通じて全国各地の自治体の方々と深く関わるうちに、それまで知らなかった地方の豊かな魅力に心を奪われました。もともと登山が趣味で自然への憧れがあったこともあり、美しい山々、澄んだ空気、おいしい水、温かい県民性が魅力的な長野県安曇野に移り住む決意をした次第です。

代表取締役社長 画像

代表取締役社長
野間 和昭 様

経営課題があったからこそ
かき立てられた“挑戦心”

アートプランニングとの出会いは、REVICareerを通じた八十二スタッフサービス様のご紹介によるものでした。地域経済を深く理解する八十二銀行様と連携した八十二スタッフサービス様のご紹介という安心感に加え、大きく3つの理由で入社を決断いたしました。

その1つは、アートプランニングが40年近く地域に根ざし、「実業」を営んでいる会社であるという点。2つ目は、藪口社長の経営理念や人柄に強く共感したこと。そして3つ目は、この会社が大きな経営課題を抱えていたことでした。経営課題と聞くと一見マイナスに思えますが、私には「自分の出番がある。これまでの経験が必ず役に立つ!」と直感的に思えました。経営という視点で見れば、航空業界も製造業もその本質は変わりません。むしろ、人材不足や事業モデルの変革、2025年12月竣工予定の工場移転といった困難な課題を前に、私の挑戦心がかき立てられました。

代表取締役社長 画像

REVICareerが可能にする
未来への人材投資

地域企業の経営状況や課題、本当に必要としている人材のニーズを最も的確に把握している八十二銀行様と八十二スタッフサービス様だからこそ、私のこれまでのキャリアや今後の人生に対する考え方を深く理解した上で、最適な企業をご紹介くださったのだと実感しています。八十二スタッフサービスのご担当者である樋沢様がスピーディーかつタイムリーに連絡をくださったおかげで、マッチング成立までの過程も非常にスムーズでした。

また、このマッチングを支えるREVICareerという制度も、大企業人材と地方を結びつける大変素晴らしい仕組みだと感じています。特に、給付金制度は地域の中堅・中小企業による大企業人材の確保の大きな後押しになります。経営者として思うのは、いくら素晴らしい人材に出会えても、投資余力が限られている中小企業では採用を断念せざるを得ない現実があるということです。そこを給付金でサポートできれば、企業はより積極的に、未来への投資として人材活用を考えられるようになるのではないでしょうか。

描くのは「自分」ではなく
「会社で働く人びと」の未来

現在の仕事で最も充実感を覚えるのは、会社の変化を肌で実感できる瞬間です。経営と現場の距離が近く社員との直接対話が容易であり、いわゆる「よそ者」の私の経験や価値観が、社員の成長や組織の前進にダイレクトにつながる手応えが、自分自身の活力の源泉となっています。

もちろん、日々の業務は決して楽なものではありません。会社の仕組みを根本から作り直す仕事も多く、久々にどっぷりと実務に浸かっています。しかし、難しい経営環境の中、会社のビジョンを形にしていく、そしてそのビジョンに向かって社員が努力を続ける、そのプロセスに大きなやりがいを感じています。

第2のステージに立った私にとって、今描いているのは「自分の未来」ではなく「アートプランニングで働く人びとの未来」です。私の使命は、この会社を「自走する組織」にする道筋を創ること。その実現に向けて中長期的な戦略を立て、実行する――。次の時代を担うリーダー層も育成し、親会社のラッキー工芸も含めたグループ全体の成長にも目を向けながら、その使命をまっとうしたい考えです。

代表取締役社長 画像
株式会社アートプランニング ロゴ画像
株式会社アートプランニング 外観画像

25年12月竣工新社屋

マッチングを仲介した地域金融機関

八十二スタッフサービス株式会社

松本営業所 副部長
樋沢 貴雄 様
八十二銀行 ロゴ画像

八十二銀行

南松本支店
支店長:小林 正樹 様
法人課:小林 浩二 様

深刻化する地方企業の
人材課題を解決するために

八十二スタッフサービスは、1986年に八十二銀行グループの人材ソリューションカンパニーとして産声を上げました。銀行法の改正後、銀行の人材紹介事業への参入が進み、ハイクラスを中心とした経営人材の紹介に力を注ぐ中、地方企業が抱える人手不足という最大の課題に私たちも直面しています。

そもそも、地方と都市部では人材の数に大きな差があり、人材の母数が少ない地方では紹介できる人材をなかなか見つけられないという問題があります。また、バブル崩壊やリーマンショックで採用を抑制していた時代があったことから、社内の人材ポートフォリオに歪みが生じ、次世代のリーダー候補が育っていないという社会的な実情もあります。若手社員の採用難もさることながら、企業の将来を担う経営人材の不足は、多くのお客さまの喫緊の課題です。当社では八十二銀行と密に連携を取り合い、お客様の事業継続や成長を左右するこの課題の解決に貢献すべく、取り組みを強化しているところです。(樋沢)

松本営業所 副部長 画像

八十二スタッフサービス
松本営業所 副部長

樋沢 貴雄 様

優秀な人材の発掘が
マッチングの起点に

通常は、八十二銀行の営業店が取引先企業様の人材ニーズをくみ取り、八十二スタッフサービスにトスアップする流れが多くを占めています。しかし今回は、日々、優秀な人材を発掘すべく情報収集を行う中で、安曇野近辺での仕事を希望されている野間様という逸材に巡り合い、私たち八十二スタッフサービスから八十二銀行に働きかけたのが始まりでした。 ちょうどその頃、M&Aで県外を拠点とするラッキー工芸様の傘下に入ったアートプランニング様では、親会社から出向する役員の方が経営に当たっておられました。ラッキー工芸様にとっては重要な人材を欠いている状況にあり、八十二銀行南松本支店も、現地で経営を任せられる人材をアートプランニング様が求めていることを把握していました。そこに私どもが野間様をご紹介したことで、自然な流れで面談へと話が進んだのです。

今回の事例は、地方での仕事を求める経営人材を能動的に掘り起こすこと、さらには、八十二スタッフサービスと八十二銀行が密に情報を共有し合うことの重要性をあらためて実感するきっかけにもなりました。(樋沢)

人材紹介事業が企業と
銀行の関係性を深める

野間様はご経歴も人物像も素晴らしく、安曇野への移住も既に決めておられたため、アートプランニング様は「すぐにでも経営を任せたい」と早い段階で内定を出されました。一方で、大手航空会社で重職を歴任し、関連会社の経営幹部としてのご経歴をお持ちの野間様は、企業の代表という責任の重さを深く理解していらっしゃいました。そこで、まずは執行役員として入社し、会社の状況を把握した上で、正式に代表取締役に就任するというステップを踏む形となりました。

入社から7カ月が経過した現在、野間様は予定どおり代表取締役に就任し、業務改革に邁進しておられます。2025年12月竣工予定の工場移転という重大プロジェクトでも指揮を執り、八十二銀行との間に新たな融資契約も締結。これまで、八十二銀行はアートプランニング様にとって取引先金融機関の一つという位置付けでしたが、野間様のご活躍のおかげで関係性が深まり、現在はメインバンクとして業務支援をさせていただくに至っております。(小林支店長)

小林支店長 画像

八十二銀行
南松本支店 支店長

小林 正樹 様

人材紹介の取り組みを
評価する行内制度が
好循環を生む

八十二銀行および八十二スタッフサービスを含む八十二グループでは、業務連携を推進する体制作りにも力を入れています。たとえば人材紹介事業においては、人材ニーズの情報を共有することで銀行の営業店の成績に反映され、成約時には営業店が評価される仕組みを導入しています。これにより銀行の担当者には、目先の数字よりもお客様の課題解決を重視し、多方面から積極的にアプローチしようとする姿勢が浸透しています。

今回の事例を通して、アートプランニング様のさらなる成長につながる基盤づくりのお手伝いができたことを大変うれしく思うと同時に、長野県で職を求める大企業出身者がいることを知り、地方への人材流入の可能性を見いだすことができました。これをモデルケースにグループが一丸となり、一人でも多くの人材を地方へ還流させ、地域経済全体の活性化に貢献できたら幸いです。(小林)

小林 画像

八十二銀行
南松本支店 法人課

小林 浩二 様

八十二銀行 ロゴ画像
八十二銀行 外観画像